(姉)マサ子の死



 私がちょうど中学生になったころでしたか、かなり昔の話になります。二人いる内の二番目の姉がマサ子と言うのですが、その姉が十六才ぐらいの時でした。京都の街を歩いていたら、突然大きな外車が止まってドアが開き…、出てきた人物はかなり有名な芸能界の人でした。有名な芸能人と言っても昔のことでしたから、何処の誰だったか忘れてしまいましたが、その時…姉が呼び止められて、近くの喫茶店に入ってその人と話をすることになったのです。後から話を聞いてみると「君、東京に行って俳優になってみないか」と言われたそうです。そうは言っても姉は美人と言う程美人でもないのですが、何か惹かれるものがあったに違いないと思います。
家に帰ってそんな話を家族の前に話したのでした。私の母親と一番上の姉は、それは「凄いネ!マサ子が芸能界に入ったら沢山のお金入ってくるし、有名になるのではないか」と、騒いでいたのでした。いよいよ!その芸能人と会うために東京へ訪れる日が近づいて来てきました。
姉は、東京へ出発する間際にも、いろいろと迷っていたのです。「もしかしたら、俳優の役柄でエロチックなものを求められようなことがあったらどうしようか、もしそうだとしたら断るしかないと、「でも…」と気持ちの整理が済んでいないところに、上の姉が何か余計な一言を言ったかは知りませんが、突如、東京へ行くのを取りやめて、普段通り仕事に出かけて行ったのです。
だから、芸能界の道を諦めたのです。




  それから、姉も二十才代になり、その前半の頃、二才年上のある男性と知り合って、結婚したのでした。二人のお金のない中での結婚生活は、大変厳しものでした。結婚してから2~3年ぐらいたってからでしたか、姉は肺の病気を煩い、病院に入院にすることになりました。そこの病院の医者は、入院は長引くと言われたそうです。私達の家族は、深く心配をしました。そして、しばらく日が経ってからのことですが、私の職場に家族から連絡が入りました。実は入院していた姉が亡くなったと、そう言われたのです。私は思わず「えっ、そんなバカな」と思い、大変驚きました。まさか!姉が!死ぬなんて!当時の私は考えもしませんでした。

  その時に、ふと思い出したのは、小学生だったある夜のことでした。これから寝ようしていた姉に枕元で言った言葉があったのです。「二十五歳で死ぬんじゃない!」とそんな言葉を掛けたのを思い出したのでした。一体何を思って言ったのかはわかりません。冗談で言ったかも知れないのに、現実に起こてしまったことです。
姉が亡くなったことに非常に悲し事でしたし、一体これからどうなるなるのか、と先が見えない不安な日々が続いたのでした。それから数年経ってから、沢田さんという女性に出会ったのです。彼女と話をするようになって、実は、彼女には弟がいるのですが、ある占い師によると、あなたが将来!結婚する相手の名前はマサ子という人で、そのうち一緒になるでしょうと言われたそうです。やはり沢田さんの弟さんは、マサ子という名前を付く女性と結婚をしたそうです。

   私の叔母が、姉の葬式に来た時に話しかけたことは、姉が死んだ直後!叔母の家の玄関に現れて、マサちゃんかと呼びかけたら、すうっと消えたと言っていました。